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I am selfish.
〜Falcon side〜
―私は我侭すぎるのではないか、と普段から思う―
真冬だと分かるかのように、日が落ちる前の窓からのぞく空は灰色だった。いつ雪が降ってもおかしくはない。今は外は殆ど暗く、尚のこと寒く見える。
暖かい談話室で寛いでいると、ナナと窓の外を見ていたポポが口を開けた。
「真夜中か明日の朝辺りには、雪が降るんじゃないかな?」
雪は珍しくない二人だ。それぐらいの予測は簡単につくのだろう。
「雪って知ってるよ! 小さくて、白くて、食べると味はしないけど冷たいんだよ!」
雪、と聞いて、カービィがそう言った。カービィらしい意見だと思うが、さすがに食べてみるのは彼かヨッシーぐらいだろう。
実のこと、私も住んでいる場所が場所のため雪はあまり見たことが無く、少しだけ興味があったりもする。
「絶対、食べる方が変だと思う」
「えぇ!? だって甘そうなイメージない?」
フォックスの言葉にカービィは頬を膨らませていた。
いつも通り賑やかでいいと思った。だが、何故か対照的に近くにいた―私から近付いたと言ってもいいかもれないが―サムスが溜息をついて立ち上がった。
「…? どうしたんだ、サムス」
「…食器洗い。私の当番だから」
まるで、嫌な雰囲気から早く出たいとでも言いたげな顔で彼女は出て行った。
サムスが出て行ってから暫くして、ロイとプリンが戻ってきた。
その時談話室はクリスマスの話で持ちきりだった。プレゼントの話や、明日はツリーを飾ろうなど、何の隔たりもなく会話している。
そんな雰囲気と、先程のサムスの雰囲気は全く逆だった。
相変わらず冷淡で、乱れ一つない。だが、何処か影のあるように見える。
正直言って、サムスが我侭を言っているところを見たことがない。それではストレスを溜めてるのではないだろうか。
…私の考えすぎか?
「ねぇ、ファルコン!」
突然、カービィが私の目の前に来た。
「何だ?」
「あのね、あのね。サムスってクリスマスに欲しいものあるのかな?」
「…何故私に訊くんだ?」
「だって、ファルコンってサムスと仲いいじゃん」
仲がいい、という言葉にフォックスがピクリと耳を動かした気がする。まぁ、気にすることでもなかったが。
「そんな風に…見えるのか? 私とサムスは」
「う〜ん。ボクはよくわかんないけど、みんながそんな感じのこと言ってたから…。で、どう?」
どう、と言われても分からないものは分からないんだが。
「…そういうものは同じ女性に聞くべきだと思うが…」
「そっかぁ! ありがと〜♪」
そう言うとカービィは、今度はピーチ姫の方へと駆けていった。
すると、タイミングを見計らっていたのか、フォックスがまとわりついていたピチューたちを押しのけてこちらに来た。それをファルコが何をやるのか分かってるかのようにフ呆れ顔で見ていた。
「…なぁ、ファルコン」
「ん?」
なんだか、表情がぎこちなかった。どことなく緊張している様に見える。
「…ここじゃない場所で話せるか?」
人目を気にするほどの話なのか、話は談話室から少し離れた廊下でフォックスは止まった。恐らく、ここからなら誰にも聞こえないだろう。
「で、話とはなんだ?」
「あ、ああ…」
少し戸惑い気味だったが、フォックスは意を決したのか、真剣な顔で言ってきた。
「…ファルコンは…サムスのことどう思ってるんだ?」
…今日中に絶対降ると思う、雪。
「お前までどうしたんだ、今日は…」
「オレは…真剣なんだ」
言葉だけでなく、私の顔を見据えているその表情からその真剣さは分かった。
相手が本音でくるのなら、私も本音でいくしかない。それが礼儀というものだろう。
「…正直、気にはなっている。自分では抑えているつもりなのだが…やっぱり行動に出てしまうらしい、な」
「…」
「だから、なのだろう…サムスには幸せになってもらいたい。だがサムスは無理をしているのではないかと、ここ最近思う。…もうすぐクリスマスだから、我侭だってめいいっぱいしたって罰は当たらない。…本人に言ったら恐らく笑われるだろうがな」
「…そっか…」
フォックスはそのまま深く考え込むと、今度は熱い表情で言ってきた。
「例え、状況的に不利だろうとオレは負けない。ちゃんとはっきりするまでは…。ライバル宣言だ」
そう言うと、フォックスはいつものように笑った。
《…取り込み中悪いが》
突然の声にフォックスはビクッっと震えるように驚いた。
振り向くとそこにはミュウツーがいた。…聞かれていたのだろうか?
《確か、お前も食器洗いの当番ではなかったか?》
「あ゛あ゛あ゛!!!」
どうやら完全に忘れていたらしい。フォックスは一目散に台所へと駆けて行った。
私は視線をフォックスからミュウツーへと変えた。
「最近、性格が丸くなったな、ミュウツー」
《お前も頑張らないと、あやつに抜かれてしまうぞ》
そう嘲笑ってミュウツーは自分の部屋へと戻って行った。
…絶対聞かれていたな、今の会話…。
《丸くなった…か》
理由に心当たりがあるのか、ミュウツーはそう自分に苦笑いしてしまった。
あとがき
サムス側とあわせると、ミュウツーがかなり丸くなったのが分かりますね(笑
きっと誰かの影響でしょう。人との関係とはすごいものです。
さてさて、フォックスのライバル宣言は無駄になるのか、ならないのか(何
2004/12/17修正