ときどき、ふと思う
ボクは一体、何者なんだろう?
ボクはどこで生まれたんだろう?
ボクにお父さんやお母さん、兄弟とか家族はいるのかな?
考えても分かんないや
きっとそれを知ってる人が
どこかにいるんだろうけど…
たぶん、教えてくれないと思う
でも
ボク自身もあまり知ろうとしてない
だって
知らなくても大丈夫だろうから
ボクはボク
カービィなんだから
木漏れ日がとても気持ちよくて、ボクはそこで一休みしようと思って、大きな木の根元に座った。
ボクはミュウツーと出合った時のことを思い出した。
今腰掛けているぐらいの…もっと大きかったかもしれない樹の近くに、ミュウツーは倒れてた。
そういうのに慣れてきたはずなんだけど、ちょっと驚いたかな。
それでボクはミュウツーに近づいたんだ。近づいたのと同時に目を開けて、まるで敵にでも遭ったみたいにボクから離れて睨んできた。
あの、なんだか悲しそうな瞳で…。
その時、ボクはなんとなく感じた。ミュウツーはひとりで何かしてる事が多いんじゃないかな?何か辛いことがあったんじゃないかな?って。…ボクの思い違いかもしれないけど。
それでもボクは、教えてあげたい。誰かといっしょにいるっていう、あったかさ。
本当に分かってくれるとは、あまり思わないけど。
今日はああ言ってくれたことだし、すこしはうまくいったかな?
「…でもリンくんに言ったら怒られるかな〜…」
いっぱい人が来るようになってから、約束したの。“誰か迷い込んだ人を見つけたら必ず知らせる”って。それを破っちゃったから…。
約束事になると、リンくんってすっごく厳しくなるんだよね。
…きっと大丈夫。
『そこのピンクのボールさん?』
「ぽよ?」
突然、誰かの声が聞こえた。振り向くとそこには髪の長い、宙に浮かんでる女の子がいた。
『良かった。あなたは私が見えるのね』
「うん、見えるよ。…キミはだ〜れ?」
『私はアイ。でも本当のアイではないの。私はね、一度死んじゃってるの。だから今の私は、きっとユーレイなの』
女の子、アイはそうちょっと難しいことを言って微笑んだ。
全く…。カービィのやつ、毎日毎日どこへ行ってるんだか。
探させられるオレの身にもなって欲しい…ってなんでいっつもみんなが指定するのはオレなんだよ…。
「あ、フォっくん!」
森の中から、きゃっきゃとはしゃいでカービィが出てきた。森で遊んでたのか。
「カービィ、お前色んな所に行きすぎだ。それじゃあ探すのも大変だし、迷子になったらどうするんだ?」
「ごめん、ごめん♪あ、でも明日も森に行くからね?みんなにはないしょ!」
そう言うとカービィはさっさと屋敷へ戻っていく。
確かに怒らせると恐い人は何人かいるが、そこまで秘密にしようとすることがあるのだろうか。あるとすれば、きっとこの森の中にあることなんだろうけど…詮索する必要はないか。
オレも戻って休もうかな、もうすぐ日が暮れる…今日はカービィを探すので疲れた。
「さっき会ったのがフォっくん、フォックス・マクラウド♪」
『ホント、あなたの言った通りキツネさんだったわ!ポケモン以外にも動物さんに似ているのっているのね!』
アイは浮いたままはしゃいでた。
どうやらアイはポケモンを知ってるみたい。確か、ピカチュウやプリン、ピチュー、そしてミュウツーもポケモンって呼ばれてる。
なんでポケモンって呼ぶのか忘れちゃったけど、普通の鳥とかうさぎとかとは違うんだって。
「アイはどうしてここにきたの?ボクたちみたいに迷い込んだの?」
『よく分からないけど少し違うかも。私、一度死んじゃう…消えちゃうって言った方が正しいんだけど、そうなる前にミュウツーと一緒にいたの。まだ何も知らなくて、小さかったミュウツーと』
ミュウツーと知り合いなんだ。…もしかしてピカチュウが言ってたとれーなーっていうだったのかな?
『でも私、ミュウツー一人残して消えちゃったの。その時言ったの、生きるってきっと楽しいことだからって。でも、それ以外にも私…ミュウツーにまた会えますようにって神さまにってお祈りしたの』
「そっか。アイはミュウツーに会いにきたんだ?でも、だったら…」
『うん…ミュウツーは私のこと忘れてしまったみたいなの。私のこと見えないし、声も聞こえないみたいなの。だから誰かに頼もうとしたの』
「そうだったんだ…」
悲しそうな顔をするアイ。なんだかボクまで悲しくなってきちゃう。
『私がなんでここにこれたかとか、難しいことはわからないけど…私、なんとなく分かることが一つだけあるの』
アイはなんだか落ち着いた様子だった。でも、目がなんだか涙が出そうになってるのにボクは気づいた。
『“生きる”って絶対楽しいことだと思うの。だからミュウツーには生きてもらいたいの、死んじゃった私の分も、消えちゃった私の分も…。でも、ミュウツーはまだそれを分かってないの、多分』
「なんとなく、分かるよ。確かに辛いこともあるけど…遊んだり、しゃべったり、ご飯食べたり、歌ったり…楽しいこといっぱいあるもんね」
ボクがそう言うと、アイは微笑んだ。ありがとう、って言ってるような気がした。
「明日、またミュウツーの所に行くから、その時いっしょに行こうね。ボク、アイが伝えたいこと、がんばって伝えるから」
その時丁度、リンくんが夕飯できたぞ、って声が聞こえた。もうそんな時間か〜。
「アイも、いっしょにごはん食べる?」
『ごめんなさい。私、ユーレイだから食べることも飲むこともできないの』
「あ…ごめん…」
『いいの。そんなに気をつかわないで。私、誰かとおしゃべりできるだけで嬉しいんだから。私はここで待ってるから大丈夫!』
ボクは、ちょっとアイのことが気になったけど、おなかもすいてたから走ってダイニングに向かった。
夜の森は酷く静寂だ。
日が出ている時に聞こえていた鳥の声は無く、聞こえるのは木々が揺れる音だけ。
活動していた小動物の姿も見えず、微かに指し入る月光に照らし出されるのは、私の姿だけ。
そして、太陽のようなあの笑顔も、今ここにはいない。
《……》
何故、こうも胸の内がうずくのだろうか。まるで古傷があるかのような感じだ。
今までこんな気持ちになったことはない。人間に逆襲を誓った時も、あの少年とピカチュウに再び会い、別れた時も、感情がこんなにも揺れたことは無い。
『ミュウツーよ、何を迷っている?』
《!?》
私は驚愕し、警戒して辺りを見渡した。突然聞こえた声の主はどこにもいない。
『お前はカービィのしつこい誘いを受けても、誰ともいたくない。孤独でありたい。そう、思っている』
《貴様は誰だ?》
人ならぬ物だということは分かった。ましてやポケモンでもない。
『私か?適切な言葉があるとすれば…私はこの世界の“神”の一人』
《神だと…?》
馬鹿馬鹿しい、そう思った。誰が自分が神だと言う奴を神だと信じようか。
それにこの声は神などという神々しいものではない。どこか狂ったような禍々しさを感じるものだ。
『私のことなど、今はどうでもいいこと。私はお前を救ってやりたいだけだ』
《信じられんな。私は誰かに救ってもらいたいと頼んだことも無ければ、救ってもらいたいなどと思ったこともない》
コイツと話しをしていると、今すぐ吹き飛ばしてやりたいぐらいに苛立ちを感じずにはいられなかった。
『お前は孤独を望んでいる。誰にも関せず、関されず。己だけの空間と時間。そう望んでいるのなら、救いを求めているのと同じだ』
《…》
何も言えなかった。あながち嘘ではないから。恐らくはあの夢の所為。
『ならば、お前に関しようとする者共を薙ぎ払えばいい。捻じ伏せればいい』
《何…?》
『お前のその力を持ってすれば、お前の存在を恐怖と認識させることも容易いだろう。お前が恐れの対象となれば、自然と誰も近付かなくなる』
謎の声はまるで楽しんでいるかのように言った。
私はしばらく考え込んだ。本当にそんなことをして良いのか…。
『迷う必要はない。お前が心の奥の願望よりも、奴らと群れる事を望むのなら…だがお前は既に罪を犯したことのある存在。偽りの命の存在。そんなお前の存在が認められるのか?』
《…》
コイツの言葉を聞いていると、分からなくなってくる。
私は何をしたいのか、何を望んでいるのか。私は何を悩んでいたのか。
分からない…何が…なんだか…。
―私は…誰だ…?―
「…ネス?」
「えっ…」
リンクさんの声を聞いて、僕は我に返った。
なんだったんだろう…さっきの悲しい波長は…―
「!?」
「ネ、ネス?どうしたんだ、さっきから様子が変だぞ?」
僕はちゃんとリンクさんの声を聞いていなかった。何故なら、
「なんだか…僕の力に似た…とてつもなく強い力を感じる…。僕なんかとは到底比較にならないくらい強い…!」
「それは本当か!?」
僕は肯いた。この力の感じ方は異常だ。頭が痛くなってくる。
リンクさんはこのことをマリオさんたちに言う為か、部屋から出て行った。
何も嫌なことが起こらなければいい、そう思った。
だけど僕らはこの時、これから起こる事態に全く気づいていなかった。
あとがき
かなり間が空きすぎてしまいましたが…
やっと中編完成です(^^;
どうやらゆきなはとことんカービィ出しまくり…(笑
もうちょっとみんなも出れるよう努力します!
次回もまた気長に待ってくださいな
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