"Selene" BGM by nerve
(c) K.Kusanagi 1997-2001

Who am I ?〜自分の存在とは…〜 後編

 

 

 

 

 


 そう、大切な何かを
 私は忘れている
 薄らいでいく正気の中
 必死でそれを探そうとする
 私がここにいる

 そして、また別には
 自分の望みといえるか分からない望みの為に
 この強大な力で
 また過ちを繰り返すことを
 罪悪感も無く、躊躇いもしない
 私がここにいる

 そんな“私”が
 本当の“私”を見えなくしているのか
 そもそも私に本当も何もあるのだろうか

 疑問だけが巡る
 他の事は考えられない
 束縛されているような
 混濁した意識


 私は何故ここにいる?


 私は…誰だ?















 計り知れない大きな何かが、私の身に何かを起こそうとしている。
 今、それだけを感じ取った。
 どうしようもない恐怖心が、私を包み込む。
―大丈夫なのか…?―
「ええ、大丈夫…」
 そう、私がこんな風に脅えていると、私の中にいるシークにも直に伝わって負担をかけてしまう。
 無力な自分、誰かに頼らなければ自分の身も守れないような自分。それが嫌であの時はシークになりすましたけれど、考え直せばそれはシークに頼っていたということで。
 最近はシークはシークだと自分の中で認識し始めたからなのか、それともこの不思議な世界の影響なのか、シークとこうやって会話ができるようになった。
 私はゼルダとして自分を守れるようになりたい、けど…今感じている恐怖心はそれさえも不可能な気がして。けれど誰にも心配をかけたくない。特にリンクには…。
―一度リンクに相談した方がいい。
 もしも君の身にとんでもない事が起きたら、それこそリンクが心配する―
「…そう、よね」
 私は酷く重く感じられる足をなんとか動かし、まだ震えが治まりきらないまま部屋から出て行こうとした。
 すると、突如何も無かったはずの背後に、何者かの気配を感じた。
「!!?」
 振り返った私はあまりのことにたじろいた。
 窓から微かに挿し入る月光で照らし出されて映ったのは、見たこともない者。人のようにも見えたけれどそれは人ではなく、魔物にも見えて魔物とは違う、白い肌をしていて長い紫の尾を持つ、冷たい印象の者。
 その者の紫色の瞳を見た瞬間、私の意識は突然途絶えた。
 ただ一瞬だけ、その瞳があまりにも悲しく、深い色に湛えられてたのだけ感じ取れた。




 楽しくしゃべり合ってた最中、突然アイは怖がるように何かに驚いて、後ろに振り返った。
「…どうしたの?」
『…ミュウツー…』
「え…?」
 アイはなんだか悲しそうで苦しそうな表情で呟いた。
『ミュウツーが…ミュウツーが…苦しんでる…。そんな気がするの。それに、とても怖い…すごく近くで…』
「えぇ!?」
 ボクは突然のことにすごく驚いた。
 ミュウツーがこの屋敷に来てるの?でも、苦しんでるって?とても怖いって?
 アイが振り返った方向からすると多分、フォっくんかゼルダの部屋あたりだと思う。でもなんでそんな所にミュウツーが――

「うわあぁぁぁっ!!!」

 ドアの向こうからリンくんとネスの叫び声が重なって聞こえた。しかもその前に電撃みたいな音がしたような気がする。
 急いでボクとアイは部屋から出た。そこにはリンくんとネスが傷を負って倒れていた。まるでピカチュウのかみなりにでも当たったみたいだった。
「どうしたんだ!!…っ!?」
 部屋から飛び出したフォっくんは酷く驚いてた。ボクもすごく驚いた。
 そこには、手に電撃をまとわせているゼルダがいたから。
「どうしたんだ、ゼルダ…!」
 リンくんがよろよろと立ち上がって、ゼルダの方を見た。
 ボク達だって信じられないんだから、リンくんには余計に信じられないと思う。ゼルダが乱闘中じゃないのに攻撃してくるなんて。
「リンクさん!ゼルダ姫の目が正気じゃないっ!誰かに操られてるんだ!」
 ネスはなんだか慌ててる、そんな感じだった。
「じゃあさっき言っていた、ネスの力に似ている強い力っていうのがゼルダを…!?」
 リンくんはぎりっと音がしそうなぐらい歯を食いしばってた。
 ネスに似た力?確か、ミュウツーも超能力を使うって言ってた気が…まさか…。
『ミュウツー…!』
 アイの声が脅えてた。ボクも信じられない。
 ゼルダの後ろに突然現れたミュウツー。ホントにミュウツーなの?なんだか全くの別人みたいだよ…!
「お前は誰だ!?ゼルダを操っているのはお前なのか!?」
 リンくんがマスターソードを構えて、今にも攻撃してしまいそうだった。
 ミュウツーは黙ったまま。なんだか怖い感じ…でもどこか悲しい感じ。
「答えろっ!」
《…黙れ》
 ミュウツーが手をリンくんに向けたかと思うと、リンくんの体が急に後ろへとふっとんだ。それと同時にゼルダのディンの炎が勢いよくボクとネスの方に向かってきた。
「くそっ!」
 フォっくんがボクとネスを抱えて横っ飛びに避けた。ボク達を下ろした瞬間、いつの間にかフォっくんの後ろに回っていたミュウツーがリンくんと同じようにフォっくんを吹き飛ばす。
 ネスはそのミュウツーの威圧に脅えていて、動けそうになかった。
 …ボク、どうすればいいの?
「何か起こったのか!?」
 そこへファルコンがかけつけてきた。後からみんなも。
「来ちゃダメ!!」
 ボクは何故かそう叫んでた。でも、遅かった。
 シークに変わったゼルダが普段の何倍ものスピードでみんなに襲い掛かっていた。ミュウツーが無理やり力を引き出してやらせてるんだと思う。このままじゃいけない!
「やめてミュウツー!なんでこんなことするの!?」
 もう我武者羅になってボクはミュウツーに飛びついた。ミュウツーはまるでそうするまでボクのことに気付いていなかったような顔をした。
《離せ》
「いやだ!ミュウツー、どこか変だよ!?ミュウツーはこんなことするはずない!」
《何を根拠にそんなことが言える?私のことを知ったような口ぶりをするな!》
『カービィ…ミュウツー…!』
 怒るミュウツーに必死でくっついていてアイのことはよく見えなかったけど、アイが泣いているように思えた。
 こうしている間に突然のこととゼルダ―シークが操られているということで抵抗できないみんなは、次第にやられ始めている。
《私は、お前の思っているような奴ではない。お前の仲間とやらを平気で傷つけることができるのだからな…!》
 ミュウツーが両手の間に、黒いボールのようなものが現れた。それはすごい音を出しながらどんどん大きくなって、バチバチと電撃を放っている。
「ダメっ!ダメだよ、ミュウツー!」

『やめて、ミュウツー!!!』

 アイとボクの声が重なった。
 ミュウツーの動きが止まった。黒いボールみたいなのもはじけるみたいに消えた。何もかもが止まっちゃったみたいだった。
 すごく静かな中で、ミュウツーはボクを見た。いつものあの瞳で。冷たいようでホントは優しい、悲しい瞳。
『ミュウツー』
 またボクとアイの声は重なっていた。もしかしたら、声以外にも重なっているのかもしれなかった。
《…ア…イ……》
 ミュウツーの目から涙がこぼれた。
 すると、ミュウツーはまるで疲れきってねむっちゃったみたいに倒れてしまった。




  ――…ツー、ミュウツー
 分かっていたんだ、本当は
  ミュウツー
 大切な、生まれて初めて知った少女の名を
  あれはね、お日さま
 あの悪夢のような場所での太陽
  あれはね、お月さまとお星さま
 暗いあの場所で私を照らしてくれた
  生きるって、ね。きっと楽しいことなんだから
 なのに…忘れていたなんて

「ミュウツー」
 アイ…。アイは…すぐ側にいたんだな
「ふふ。やっと気付いてくれた…。ね?生きるって楽しいことだったでしょ?」
 ああ…。なんでこんな事に気付かなかったんだろうか
「それじゃあ…もう、お別れだね」
 …!行かないでくれ…!
「もう…こまったさんね、ミュウツーは」
 私は…ぼくは…
「私ね、きっとミュウツーをここまで案内するために生まれてきたんだと思うの」
 アイ…
「だからね、ここでお別れ。もっとたくさん、ミュウツーと一緒にいたいけど。
 でも、ミュウツーにはりっぱなお日さまがいるじゃない」
 ぼくの…お日さま?
「カービィが…仲間っていうお日さまとお月さまとお星さまがいるじゃない。
 ホンモノでも、コピーでもない、仲間。きっと素敵な友達。
 だからね、もうミュウツーはさみしくない」
 …アイ、また…止まらないよ…涙
「もう…こまったさんなうえに泣き虫さんなのね、ミュウツーは。
 …あのね、ミュウツー」
 なに…?
「涙はね、痛いときと悲しいとき流れるけど、他にも流れるときがあるの」
 痛くも、悲しくもないときに…?
「そう。それはね、すごく嬉しいとき」
 嬉しいとき…?
「だから、さっきミュウツーが流した涙は、嬉しいときの涙だと思うの」
 でも、今流れてるのは…悲しい涙だ…
「ミュウツー…」

    ありがとう、あなたの涙――


 




《…ここは…?》
 目を覚ました私の目の前に広がったのは、真新しい天井。
 明かりはついていないが明るい…もう、日が昇ったのか。
 …?昨日、私は…
「あっ♪やっと起きたぁー!」
 見慣れたピンクボールが私の上に乗った。
《カービィ…?》
「昨日の夜はホント、びっくりしちゃった。…大丈夫?」
《…昨日の夜…私は森にいて…変な奴の声が聞こえて、それで…っ!》
 上半身を起こしてみれば、そこには一人の姫らしき人物―昨晩私が能力で操った少女がいて。
「気が付かれました?」
《…昨晩は…すまないことをした…》
 謝って解決することではないが、確かにあの行動は私自身の奥底がやらかしたことだ。あの自称、神を名乗った声の主にしてやられたというわけか。
「気にすることではありません。貴方の目を見た時…なんとなく理解できました。貴方もまた、悩みを抱えているのだと。そこをつけこまれた…私と同じです」
 少女はあんな酷いことをした私に微笑んだ。そう考えると、私はなんて心の狭い奴だ。
「それじゃあカービィ、…えっと、ミュウツーさんでしたね。後で一緒に談話室に来てください。何やら自己紹介をするそうですよ」
「はぁ〜い♪」
 少女が出て行くと、カービィは私のことをじっと見つめた。
「アイが…アイが消えるにね…最後に言われたの。“あなたが、ミュウツーのお日さまになってあげて”って。ボク、頑張るよ!…って言っても、あの後リンくんにこってり説教されちゃったけど」
 相変わらず、変わらない笑顔な奴。確かに“お日さま”だな。
「それでね、ここがミュウツーの部屋だよ!自由に使っていいんだよ!ボクたち、みんな仲間だよ!友達!」
《…そうだな》
 なんだろうな…この暖かい感じは。
「ミュウツー?どうして泣いてるの?」
《…私は…泣いているのか?》
「分かった!きっと嬉しくて泣いてるんだよ♪痛い時と悲しい時、嬉しい時に涙は出るんだよ?」
《…!》

 本当に、カービィには驚かされてばかりだ。
 私の初めてばかり。

「ミュウツーは、ミュウツーだから。早く行こう!みんなが待ってるよ!」





 私は誰だ?
 答えは一つ



 私は私。ミュウツーだと

 そう教えてくれたのは
 アイとカービィであろう








「やっときたね!」
「自己紹介の前にスマデラやらないか?」
「おっ、それはいい案だな」
「ミュウツーさんのお手並み拝見、ですわね」
「3対1で、ミュウツーさんは一人でどうでしょう?」
「ちょ、ちょっとみんな、昨日のこと根に持ってない?」
《……》

 ここで“生きる”のも、少し難しそうだ…アイ。







あとがき
やっと終わりましたぁ!!!
大部分がイベント戦「ミュウツーの影」な話に…;
そして激しくミュツアイ(笑(いや、好きなんですヨ。ミュツアイw)
っていうかぼく口調ミュウツーです。もち、市村さん声でw(ぉ
ミュツアイからミュツカビにかわるのでぃす(マテ
最後のほう、親しそうな口調で喋ってますが…カービィオンリーね(マテ
終わり方微妙で、妄想詰め込みすぎの話でしたが、
読んでくださってありがとうございました!
ついでにいうと、3対1のスマデラは
ミュウツーの勝利で決着が付いたと思われます(笑

2004/11/21修正



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