Who am I ?〜自分の存在とは…〜前編

 

 

 


ワタシハ ダレナノダロウカ…

ナゼ ワタシハ イルノダロウカ…

 お前はミュウツー。
 世界でもっとも珍しいと言われたポケモン、ミュウから作られた、
 最強のポケモン

ワタシハ カレカラ ツクラレタ

デモ カレトハ マッタク チガウ

ナラ ワタシハ ナゼ ソンザイスル?

 君は誰なんだい?
 ボクに似て、ボクじゃない
 なんなら試す?
 体と体でぶつかり合えば
 オリジナルはコピーには絶対に負けやしない

 つまり、君は元々いない存在になる

イラナイ ソンザイナラ

ナゼ ワタシハ ツクラレタ?

 結局、お前は道具なのだよ
 そう、ポケモンは全て人間の道具なのだよ

ワタシガ ドウグ?

ワタシハ イキテイルモノデハナク ドウグダトイウノカ?





ニクイ

ニンゲンガ ニクイ

デモ



 私がお前を作ったのだよ



ニンゲンガ イナケレバ

ワタシハ ココニハ イナカッタ








 ワタシハ   ダレダ   ?

 

 

 

 

 

 

「…また、あの夢…か」
 夢で、あの虚無に攫われた。
 当に片隅に置いておいたはずの嫌な想い。
 あの時、逆襲を誓った時の自分。
 何故、思い出してしまったのか全く…いや、このわからない別世界に来てしまったからだろう。
「ミュウツー!」
 向こうから、自分を呼ぶ声がした。
 私を呼んだその―人とは呼び難い―人物は、私の十分の一もない身長で桃色の球体に赤い小さな足を生やしたような、私の世界にはいない者だ。
「えへへ♪また会いに来たよ。リンくんの目を盗んで森の来るのって結構大変なんだから」
 リンくん、とはとある人物のあだ名らしい。私には関係ないが。
 この球体は、私がこの世界に迷い込んでしまった日、なぜか出会ってしまった。そして、何度も私がいるこの森に来ては、『みんなで一緒に暮らそう』などと、馬鹿げたことを言ってくる。
「だったら来なければいい。私は、奴等とも、お前とも馴れ合う気は無い」
 そう答えれば、
「ボクは、お前じゃなくてカービィだよ。何回言ったら分かってくれるかなぁ〜」
 そう、球体―カービィは明るく言ってくる。何回も言って分かってないのはコイツの方ではないかと思うぐらいだ。

 

「ねぇ、今日はどんなお話してくれる?」
決まってカービィはそう訊いてくる。私の話がよほど珍しいことばかりなのだろう。やはり住む世界が違うだけあるのだが。
 こうなるともう、カービィを私から引き離すことが出来ない。例え、力尽くで遠ざけても、テレポートで逃げようとも、何故かすぐ見つかる。…不思議なやつだ。
 一体、どうしてそう、追いかけてくるのか口で聞いたついでに心の中を探ると、
「ミュウツーのこと、もっと知りたいんだもん!」
《だってボク、ミュウツーの友達になりたいの》
 言ってることと本心の意味ががほぼ同じなのである。多分、隠し事をするほど悩みなんてないやつなのだ。
「今日、嫌な夢を見た」
不意にそう言ってしまった。
「嫌な夢?どんな?」
 カービィは心配そうな顔で私の顔を見てきた。
「…自分を見失う、夢」
「自分を見失う?ミュウツーがミュウツーだって分からなくなっちゃうの?」
 変な夢だね、とカービィは言った。
 お前には分かるまい。私は他の生物とは違う生まれ方をしたのだ。
 父がいて、母がいるわけではない。同じ種族がいるわけでもない。
 仮にミュウツーと言う名前があっても、それはあくまで仮なのだ。それが私だとは言えない。
「…ねぇ、ミュウツーってどこで生まれ育ったの?お父さんは?お母さんは?」
 今一番訊かれたくない質問だった。
 一瞬、嘘をつこうと思った。しかし、ここで嘘をついて彼に好印象をもたれてはまたここに通ってくるだろう。それだけはご免だ。

 

「…私は、とある研究所で作られた。父も母も無い。ただ分かっているのは、私の元になっている者がいるということだけだ。つまりはクローン、複製された存在だ」
 途中、凄く嫌だったが、これでカービィも私を一線置くだろう。
「あ…。ごめん!そんなんだなんて知らなくって…!」
 驚きと弁解の顔でカービィは慌てていた。思ったより大げさだったが。
 ふと、どうしてそんなことを訊いたのか気になった。失礼ながら心の中を覗いてみた。―私もコヤツの所為で人間じみたものだな…。
「ごめん!ボクってホント、鈍感だから!」
《でもいいなぁ…ミュウツーは…》
(…?)
 何がいいのだろうか、こんな出生、こんな自分。そう思いながら彼の心に耳を傾けた。
 それ以降、カービィは黙って俯いて(?)いたが、心の中はまだ何かを思っていた。
《全然違うかもしれないけど、親みたいなのがいるんだよね。自分が何者だか知ってるんだよね》
 何が言いたいのか全く分からない。ただ、いつもとは違う様子だった。カービィには似合わぬ、どこか暗い雰囲気の心の声。
《ボクは…自分の名前しか覚えてないんだよね。宇宙を漂ってただけだから》
(…!?)
《ボク、何者なんだろ…》
 あまりの意外さに驚いた。
 カービィは、この幸せそうな笑みをする者は、己がどういう生物か、知らないとでもいうのか?
 私は、まだ恵まれている方だとでもいうのか?
 己の存在意義が分からないで、孤独を望むのは贅沢だともでも言うのか?
「…カービィ」
「あ、うん。何?」
 心の中ではそんなことを思っていたのにも関わらず、カービィは笑顔でこちらを見た。
 一瞬、訊こうかと思った。だが、それでは意味が無いし、何を言われるか分からない。…本当に、彼にはいろいろ考えを変えられてしまうな…。
「明日までに…考えておこう。その、仲間になるとやらを…」
 それを聞いた瞬間、カービィは今まで以上に明るい笑顔でこちらを見た。
「ホント!?ホントだね!?約束だよ?明日までに考えておいてね♪」
 そう言うとカービィは、元来た方へと走り戻って行った。
 途端に静けさが舞い戻った。

 

 

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あとがき 

  かなりの妄想度の作品になります。3話とも(死
  二人とも好きなんですよ〜vv
  ミュウツーはきっと、ただでは仲間にならないでしょうから、
  きっと何かエピソードがあってもいいんじゃないかなぁ、っと思って書きました。
  ミュウツーの設定は映画版からとってきています。
  でも、別に説得相手はカービィでなくても良かったかもしれません(ぉ
  ネスやピカチュウでもOKだったと思いますね。
  でもカービィにしたかったのは好きだから(笑