ぬくもり
静かな昼下がり。
こういう日には、大抵ジャックは軒下でぼーっとしている。
そして今家には二人しかいない。
こういう時には、大抵二人して寄り添うように並んで過ごしている。
あるようでない二人っきりという時間。
とても穏やかで、緩やかに感じる。
そうしていると胸の内からある感情が浮き上がってくる。
寄せたり引いたりとさざなみのように表れるこの感情を、もてあますようになったのはつい最近で。
それをジャックに受け入れられてからは、余計に自分ではどうしようもなくなってしまって。
「…ジャック」
「…何?」
その感情が抑えても抑えてもふくれ上がってしまうと、こうやって体を抱き寄せてしまう。
そうしている間はジャックも、体を預けるように寄りかかってきてくれる。
かかる重さや伝わってくる少し低めの体温が心地よい。
「…なんでもない」
「…?」
安堵したからなのか、それとも自嘲なのか笑みがこぼれた。
ふと気づくとジャックが顔を胸にうずめてきた。
気分がいいと時に抱きしめると大抵はこうやっている。本人は無意識にやっているようだが。
そうさられるともっと自分の方へと抱き寄せてしまう。
ジャックに限って、時々こうやって無性に抱きしめたくなる。溢れそうな感情と共に。
それはジャックにも少しあるようで、たまに向こうから抱きついてくる時がある。
俺が想うのとは少し違うのかもしれないが。
体を預けられる重さも、やんわりと広がる温度も、やわらかく伝わる音も。
全部が心地よくて、求めてしまう。
手放したくないと。
あまりに心地よくて、なくなってしまったら自分はどうなるんだろうと。
これは幻ではないかと不安になる。
「…六」
「ん?」
まるで猫がすりよってくるように、また距離が縮まって。
顔が見えないからどんな表情をしているのかは分からないが。
「…あったかいな」
とても穏やかだ。
幸せ、というのだろうか。
「…そうだな」
この温もりは絶対に離したくない。
ついでにいうと誰にも渡したくはない。
腕に力を強く入れてしまう自分に対して、つくづく独占欲が強いと思い知らされる。
けれどもそれが心地よい。
とても静かで長く感じていたい昼下がりだった。
あとがき
超激甘ですみません…。
そして短くてすみません…orz
それしかいいようがありません。
実際にこんな風に過ごしてたらそれはそれで萌えです(ぉぃ
2005/03/21