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やさしいうそ
君が僕の家に来るようになってから二ヶ月ぐらい経つのかな。
休日になるとほんの少しだけ狭くなる部屋。
それがなんだか暖かい気がする。
最近は休日以外の日もそう。
「佐藤さん?」
ふと見ただけで君がすぐいて。
それぐらい、君はよくうちに来るようになったなぁって思って。
「どうかしたんですか?」
「うん? …ちょっと考え事」
まるで世話焼きな弟みたいに、君は話しかけてくる。
一人っ子だったせいなのかな。そうしてるだけで、なんだか楽しくて。
正確には君のこと見てるのが好きなのかな。
「リュータ君こそ、どうしたの? じっと僕の顔なんか見て」
だからね、気づくようになったんだ。
気にするようなことではないのだけど。
「え…いや、佐藤さんの顔見てるのが好きなんですよ」
そんな君の小さなうそ。
話しかけて欲しいって顔に出てるのに。
君が何度もちらっと見ているのに気づいているのに。
そう分かってても、ぼーっとしちゃうのはいじわるなのかな?
「リュータ君、もしかして疲れてる?」
「そんなことない! 俺はいつも通り元気ですよ!」
ほら、また。
学校やバイトですごく疲れてるだろうに、いつもそうやって元気そうに笑う。
それくらい、正直に言ってもいいのに。
でもそれがリュータ君の優しさなんだなって、気づいて。
こんな僕なのに気遣ってくれて。
「何かいれてくる?」
「大丈夫だって! それに佐藤さんこそ、疲れてるんじゃ? 俺が代わりにやりますよ」
その優しさや気遣いが嬉しいから。
だから気づかないふりをして、僕も笑う。
その代わりほんの少しだけ許して。
「そんなことないよ」
僕も小さなうそをつくことを。
君はきっと些細なことでも心配してしまうだろうから。
この時間を崩したくないから。
少しでも長く君と過ごしたいから。
君も僕も不器用だねって気づいてしまう。
そんな、君の優しいうそ。
あとがき
BGMにしている曲をイメージして書きました。
まだサトウさんはリュータがサトウさんのことが好きだと知らない時期の話。
なんだかんだ言って、サトウさんは気づくときは気づくんですよ。
…なんかもっと説明がないと分かりにくいかもー;;
2005/02/1