彼は地に降り立って七日間で音の世界を創り上げた。
 彼は自分の創り上げたものには満足した。
 けれども、彼は孤独だった。
 話せる生き物がいなかったわけではない。むしろ彼の創り上げた世界には音と同じようにたくさんの生き物がいた。
 それでも彼は孤独を感じた。
 それは彼は創造主であったからだろう。
 だから彼は、己の一部から自分の姿に似せた分身とも己とも言えない自分と対なる者を創り出した。
 それは彼をとりまく闇であり、影とは異なる者である。
 対なる者は言った。
「何故俺を必要とする?」
 彼は言った。
「存在というものは一つじゃ成り立たない…っていうものなんだな。
 本音は寂しかったからだよ」
 つまりは己と対になる別なる個が、けれども己と同じ者であり、支えてくれる者が欲しかったのだと。

 こうして対なる者は生まれた。
 対なる者は彼と瓜二つの姿であったが、彼とは違いその姿は常に黒く、また創造の力はなかったが代わりに彼よりも生き物の気持ちがよく分かった。

 そして対なる者を最後に全てを終えた彼はその日を一つの始まりとした。

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