たまたま帰り道にタカトに会った。
考えてみればこ最近(と言っても一ヶ月ぐらい)会ってなかった気がした。
「最近どうなんだよ」
肌の色や髪の色は違うにせよ自分とそっくりなこの従兄弟は、会えば必ず近況を訊いてくる。
タカトには特に隠す必要がないので、そのままを話す。それはタカトも同じだ。
「特に変わりないよ。担任がもう少し上の高校目指したらって煩いぐらい」
「頭いい奴は羨ましいよ」
会った時からタカトは疲れた顔をしていた。
タカトもそこそこいい成績なのは叔母さん(つまりはタカトの母さん)からよく聞かされてる。だから進路関係でタカトが疲れているようには思えない。
「まあ、ハジメ先生は好きな進路に進めばいいさって言ってたけど」
「ハジメ先生、ね……」
ああ、そういうことか。
「エイト兄とハジメ先生って仲良いんだっけ?」
どういう経緯で二人が出会ったのかは知らないけど、どうやら二人は親友(?)らしい。
あまりの仲の良さに家に遊びに来るうんざりしてると、前にタカトが話していた覚えがある。
「仲良いっていうか……イチャイチャ?」
「イチャイチャ……」
「“ハジメちゃん、もう飲むのよさへん?”“そんなカワイイこと言うと襲っちゃうぜ〜!”……だぜ?」
「……イチャイチャだ」
なんというか、ご愁傷様。やっぱりエイト兄は叔母さん似だと思う。
「なんていうか、ミサ姉と交換して欲しいぐらい……」
「いや、姉さんも姉さんで煩いよ」
それはそれは溜息をつきたくなるほどだ。
「どんなことで煩いん?」
「DTO先生のことばっか」
タカトはさっき自分がしたかのような同情するような顔をした。
「“ねぇ、先生ってどんな食べ物好きかな?”“先生の好みのタイプってどんなのだと思う?”“先生って今好きな人いるのかな?”……訊かれても困る」
「俺から見ると複雑やで? 自分の従姉が父親の従弟が好きだなんて」
年は離れてるらしいが、DTO先生と叔父さんは従兄弟だとか。自分とタカトが似てるように微妙に似てたりする。
そして姉さんはそのDTO先生のことが好き。偶然にもその事実を知ってるのは自分とタカトだけだ。
「世界って、広いようで狭いんやなぁ……」
タカトは話が進んでいくと微妙に大阪弁が混じる。今まで大阪に住んでいたせいなんだけど、エイト兄ほどじゃない。
なんか見ていると本当に対照的な兄弟だと思う。それは自分と姉さんにも言えることなんだけれども。
「ホンマ、弟って嫌やわ……」
「かといって兄になるのも嫌だけどね」
やな、とタカトは相槌をうった。
こうして話してて楽しいのは兄弟だからでもなく友達だからでもなく、従兄弟だから。
「俺、ハヤトが従兄弟で良かったと思うんや」
無愛想な表情の中に、どこか嬉しそうな表情を見せるタカト。
「僕も、タカトが従兄弟で良かったと思う」
タカトに今の僕はどう見えてるんだろうか。
「あっ」
「どないした?」
「従兄弟といえば……もう一人いるんだって。父さんの妹の息子」
「へぇ〜……どんな人なんや?」
「会ったことないし、名前も聞いたことないよ」