『六、なに出してるの?』
フロウフロウは相変わらずふわふわ浮きながら六のしていることを見ていた。
六は何やら押し入れの中から大きな箱を出した。
「まぁ、お前がいるから出してもいいと思ってな。少し古いが」
『?』
大きな箱の中には小さな箱がいくつも入っていた。
フロウフロウには到底それが何か思いつかなかった。
「今日は桃の節句だからな」
「うわぁー! ひな人形じゃない!」
途中であったそれを見て声をあげたのはミサキだった。
まだ箱に入ったままの人形を見て「ウチでもこんなことしたわよねぇ……」と懐かしんでいる。
「てか俺、こんな目の前でひな人形見るのも飾るのも初めてッスよ」
「そっかー。リュータは一人っ子だもんねー」
手伝いながらも少し大げさなリュータの驚きぶりにミサキはクスクス笑う。
「ウチのは五段飾りだったから、七段飾りなんて憧れだったなぁ……。でも、どうして?」
「昨日、テレビ見てた時にひな人形のCMかなんかがやってて、それでフロウフロウが六さんにやたら質問攻めしちゃって。だから六さんがあるから出してやるっていう感じ」
リュータがとても楽しそうにひな壇に人形を飾っていくフロウフロウを横目でみた。ふふふ、とミサキは微笑む。
「じゃあ、フロウちゃんはお雛様ね。そういえば、お内裏様はどこいったの?」
一瞬リュータには首を傾げたが、すぐに言葉の意味を理解した。
「お内裏様にはあられとお酒買いに行ってもらってるんじゃなかったかな。お雛様はひな人形を見せてびっくりさせたいんだって」
「まぁ」
一体これは何なんだろうとか、なんでこんなものが突然とか。あまりにも驚きすぎて、買い物袋を持ったままジャックは突っ立っていた。ぽかーんと口をあけて少し間抜けな表情までしている。
小さい壱ノ妙みたいだと内心思っていることだろう。
『ジャック! ジャック!』
興奮が納まりきらないのかとても嬉しそうな笑顔でフロウフロウはジャックに抱きついた。
『おどろいた? おどろいた? キレイ? キレイ?』
「……綺麗だけど、何なんだ?」
するとまた嬉しそうな笑顔でフロウフロウはくるりと一回転。
そしてジャックをひな壇の目の前までこさせると、自分はひな壇の横に行きコホンと咳払いをした。
『今日はね、ひなまつりって言うの。女の子のお祭りだよ。それで飾るのが、このひな人形だよ』
コクコクとジャックは相槌を打つ。
フロウフロウは少し高く浮いて、一番上の段を指差す。
『一番上が、おだいりさまとおひなさまっていうの。王さまとお姫さまみたいなのなんだよ。その下の段にいるのが三人カンジョって言って……』
「すごく嬉しそうだな。フロウフロウ」
「そりゃそうよー。なんたってお内裏様と一緒だもの」
襖の間から見える二人の様子を見てミサキも嬉しそうにしている。リュータはミサキに対してか少し苦笑い。
「あれ、そう言えば六さんは?」
「複雑な顔して台所で五目ちらし作ってる」
「あらあら」