闇の淵から












 9年前のあの日、マレフィセントと共にやってきて、
 何もかも奪っていった、ハートレス。
 ハートレスを研究していたくせに、侵入を阻止できなかったアンセムに俺は怒りを感じたんだ。


 それよりも許せなかったのが“あいつ”だった。
 過去に英雄と呼ばれ、今は闇となった剣士。


 “あいつ”は闇にその身を捧げた。
 理由は全く分からない。
 9年前にあそこから脱出しようとした俺達の前に立ちふさがった“あいつ”は
 躊躇なく、その長刀を俺達に向けて襲い掛かってきたのを、今でも鮮明に思い出せる。

 敵わないと分かっていながらも、俺とスコールは立ち向かった。
 あの時点ではそれしか考え付かなかった。
 危うく殺される寸前でシドがグミシップとかいうので俺達を助けてくれなかったら
 今頃俺とスコールはいなかっただろう。

 “あいつ”は去り際に俺にこう言ったんだ。

「お前は そのうち 俺を探さなくてはならない
 そして 俺も お前を探さなくてはならない」

 まだ子供だったその時は全くその言葉を理解できなかった。
 いや、今でもそれはよく分からないんだ。
 ただ…あの日以来、何かが欠けたかのような嫌な気持ちに捕らわれた。
 そして、悪夢しか見なくなった。

 “あいつ”が俺から何もかも奪っていく。


 そういえば、誰かが言っていた。

 求めれば必ず会える しかし最も大切なものを失う。

 まさにその通りだった。


 欠けたものは“あいつ”が知っている。
 確信があるわけでもないのに、俺は探し始めた。

 だが、やはり闇の力に頼るべきではなかった。
 大切なものが―“光”が見えなくなった。

「奴を見つけるまで戻らないのか?
 彼女はお前のことを心配してるんだぞ」
「…ケリをつけなきゃいけないんでね」

 あそこでスコールにそう訊ねられたが、
 その言い訳は半分嘘だ。
 本当の理由は
 あの時から“あんた”のことが、輪郭がぼやけてるようにうまく見えなかったから。

 戻るのが怖かったんだ。
 今の俺には“あんた”を見つけることが出来ないから。


 “あいつ”は俺の“闇”
 “闇”の中に“光”が埋もれてしまっている。

 だから、俺は“あいつ”を倒さなければいけない。
 それまで戦い続けなければならない。
 “闇”を払いのけなければならないから。

 そう考えると、あの子供は俺より強くて当然なのかもしれない。
 あの瞳は常に光を湛えていた。
 俺も子供の時はそうだった、と思う。

 そう思うのも、これで最後にしたい。



「やっと会えたな」
「俺も探していた」
「お前が存在する限り 俺は悪夢から目覚める事が出来ない
 お前は俺の闇だ」
「ならば闇へと誘おう 永遠と光を失い
 目覚める事のない悪夢の中へ」








END


≪close≫
 

あとがき
…書いてた当時はクラVSセフィ見てません…;;
なのに、ネットでクラVSセフィ戦のセリフだけは見ました。そして引用。うひゃー(何
クラウドが戦う理由、というリクエストをいただいたのですが…
勝手に色んな設定を捏造してしまいました;; しかもさりげなくFF7ネタ入り;;
こんなのでよろしかったでしょうか?;;