春眠暁を覚えず












 春が近づけば、北から吹いていた風は南から吹いてきて。
 おひさまが顔を出す時間が長くなって、あたたかくなってくる。
 そういえばボクも、春風といっしょにプププランドに来たんだっけ。

 ボクは春が好き。
 あたたかいのと、色とりどりの花や若草。
 そして、昼寝をすると気持ちいい時期だから。










 日差しがぽかぽかと暖かい日。
 こういう日には、子供メンバーは大体決まった行動をする。
 ネスや子供リンクなどは、外へ遊びに。
 プリンとナナは、その様子を見ながら花を摘みに。
 ピチューは、干したばかりのタオルが詰まった籠の中で昼寝。
 昼寝といえば、いつでもよく昼寝をするカービィはというと、指定席で春の日差しを満喫している。
《…何故私の膝を枕代わりにする?》
「えぇ〜。ダメなの〜?」
《…駄目ではないが…》
「じゃあ、いいじゃん♪」
 カービィの指定席は、ミュウツーの膝の上。
 確かに、カービィとネス以外は用事がない限りミュウツーのそばにはよらない。
 ネスは今、子供リンクやピカチュウ達と野球をしているのでまず来ないうえ、ミュウツーは殆ど静かな森の中にいる。
 ゆっくり寝ていたいカービィにとっては恰好の昼寝ポイントとなるのだ。
 ミュウツーからしてみればたまったもんじゃないと思われるが、彼もまんざらでもなく、逆に最近は和んでいるようにも見える。ただ、しっぽを枕にされるのは嫌がるが。
「ふわぁ〜…」
 そよ風と共に大きなあくびを一つ。
 いつものカービィだったらここで寝てしまうはずなのに、今日はなんだか寝ない様子。
《何か話でもあるのか?》
 ミュウツーが訊ねると、カービィはえへへと笑って見せた。


「ミュウツーは春って好き?」
《…何を訊いてくるかと思えば、そんなことか》
「そんなことっていうのはひどいなぁ〜」
 眠いのか、口調がふやふやとした感じのカービィ。
 この子の為にも、早く答えてやろうとミュウツーは思った。
《嫌いではないが、私には今まで季節を楽しむ余裕がなかったからな》
「じゃあ、これから好きになる?」
《かもしれない》
 そう言うと、カービィは笑みを浮かべた。
 普段の元気な笑顔とは違い、ふんわりとした柔らかい笑顔。
「ぼくね〜…春が一番好き。すごくあったかいから」
《それで、昼寝か?》
「ただの昼寝じゃなくてね〜…誰かと一緒に寝るの」
 カービィはミュウツーの膝で気持ちよさそうな顔をする。
 まるで、ミュウツーに甘えているかのように。
 その表情を見て、ミュウツーはなんとも言えぬ感情になった。
 そっとカービィの頭をなでてやると、気持ちいいのか、少しうっとりしたような表情になる。
《お前は、頭を撫でられるのが好きなのか?》
「わるい〜…?」
《悪いとは思わないが、変わってるな》
 ふと、視点を落とすと、もうカービィは寝てしまっていた。
 たった一瞬で眠ってしまうとは、羨ましい寝つきの良さである。
《…春も悪くはないな…》





 しばらくそうやっているうちに、ミュウツーも眠っていて。
 結局、迎えが来るまで、そこで仲良く昼寝をしていた。
 春はそんな暖かい季節である。








END


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あとがき
レモンさんへ
ミュツカビ小説てことでこんなのになりました。
ほのぼの目指しましたがどうでしょうか?
ラブラブっていうよりも、カービィが甘えてますな(笑