けほっけほっ
「プリンちゃん、大丈夫?」
「大丈夫、のどが少し痛いだけだから」
 歌うのが好きなプリンは、普段から喉を痛めないように心がけている。それでも喉が痛いというのはどこかおかしい。
「本当に大丈夫?」
 ピカチュウも心配そうな顔をした。
「ホント、大丈夫だよ!」
 そう言ってプリンは笑った。


 翌日、プリンは38度を越える熱を出した。







風邪を引いた歌姫







「心配する事はない。ただの風邪だよ」
 しゅんとした様子のプリンに、Dr.マリオは優しく答えた。
「ほら、大丈夫じゃなかったじゃない」
 付き添っていたナナが思わず文句を口からこぼした。プリンはその言葉に申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「ちゃんと薬を飲んで休めば直ぐに良くなるよ。あと、ご飯も消化しやすくて栄養が取れるものをちゃんと食べておいた方がいい」
 そう言ってDr.マリオは風邪薬を近くのテーブルに置くと部屋から出て行った。


 プリンの部屋の前でロイはそわそわしていた。
 最初にプリンが熱を出していることに気が付いたのはロイだった。愛しい歌姫の様子が変なのを気付かないほど彼は鈍感ではない。
 良い意味でプリンは滅多に風邪を引かない。だから余計に心配なのだろう。
「あ、マリオさん!」
 丁度部屋から出てきたDr.マリオを呼び止めた。
「大丈夫。ただの風邪だから直ぐ良くなるよ。心配なら看病してあげるといいよ」
 呼び止められる事が分かってたのか、Dr.マリオはにこりと笑う。
 それを聞いて安心したのか、ロイは一目散に下の階へと下りていった。換えのタオルなどを取りに行く為に。



 プリンは窓から外を眺めていた。
 今日は本当ならトーナメントをやる予定だったのだが、プリンがこうなってしまった為中止になったのだ。その所為か、プリンの表情はどこか悲しげだった。
 コンコン。
「ロイだけど…入っていいかな?」
「う、うん。いいよ」
 思わずプリンは焦って、なんとか表情を元に戻した。
 部屋に入ってきたロイは、片手に氷水の入った桶とタオルを持っていた。
「大丈夫?」
「うん。お薬飲んだから少しは楽になったよ」
 その言葉を聞いてロイはほっとしたのか、顔が少し笑顔になる。プリンもその笑顔に微笑み返す。
「良かった。でも、寝てた方がいいよ。まだ熱あるみたいだし」
 ロイはプリンの額に手を当てた。微かにまだ熱いのが感じられる。
「ロイの手、冷た〜い♪」
 目を瞑って、少し幸せそうな声でプリンは言った。
「そ、そうかな? こっちの手で桶持ってたわけじゃないんだけど…」
 思わず手を離したロイは、頬を紅潮させてその手を見た。
「でも、手のひらが冷たい人って、心があったかいんだって」
 にこっと笑うプリン。まだ少し辛そうだが、それでもロイが耳まで真っ赤になるには十分だった。
「お、お腹すいただろ? な、何か持ってくるよ!」
 真っ赤になりすぎたからか、その場から逃れようとするかのようにロイは駆けていった。




 こちらは台所。
 今、リンクが眉間にしわを寄せて何やら重い表情を浮かべていた。
 と、いうのも普段メンバー全員が何故だか病気にかかりにくい為、病人の為の食事を作ったことがなかった。この間、ネスが風邪を引いた時は熱は出ず、薬を飲んで寝たらすぐ治ったので食事は普段通りで済んだのだ。
 風邪をひいた人の為の料理を知らない料理係リンクには相当な問題である。
 そこへ丁度台所にロイが入ってきた。一瞬、そのリンクの表情にぎょっとしたようだが、すぐに冷静になる。むしろ、先ほどから考えてみれば落ち着かされたとも言ってもいい。
「リンク、どうしたの? そんな顔して…」
「いや…病人には何食べさせたらいいんだろうって…ロイ、何か知らないか?」
 リンクがそう訊ねるが、ロイは首を振った。
 二人とも思わず黙って考え込んでしまう。
「あれ、何してるの?」
 ジュースでも取りにきたのか、ネスが台所に入ってきた。
「ネスは何か知ってる? 風邪の時食べるもの」
「えっ。…う〜ん…おかゆとか?」
「おかゆ?」
「うん。いつもより水の量を多くしてご飯を炊くんだ。炊いてる最中に溶き卵とか、ニラとかいれる時もあるよ。ぼくも風邪引いた時ママによく作ってもらってた」
 でも、ニラは少し苦手とだけネスは付け足した。
「作り方、教えてくれないか?」
 リンクの問いに、ネスは迷うことなく肯いた。




 ごろんごろんとプリンは何度も布団の中で寝返りを打ってみる。
 眠気がなくて眠れない。歌うことも出来なければ、誰かとおしゃべりをして楽しむことも出来ない。
 ただ退屈で仕方がないという感じだ。
 これがマルスだったら読書をしていたのだろうが、プリンはあまり読書は好きでないらしい。
 窓から見える外の様子から今は正午からニ、三時間過ぎていることが分かる。
「プリン、起きてる?」
 ゆっくりと開かれたドアの向こうには、トレイを持ったロイ。トレイの上には小さな土鍋と何も入ってないお茶碗が乗せられていた。
 薬が置いてあるテーブルの上にトレイを乗せ土鍋の蓋を取ると、まだ熱いのか湯気がたっている。ロイは土鍋の中のものをおたまでお茶碗に盛りだした。
 プリンは起き上がり、布団に体をくるませたままベットをイス代わりに座る。
「おかゆ?」
「プリンも知ってるんだ? ネスに教えてもらって、リンクさんと作ったんだけど…どうかな?」
 プリンはお茶碗の中を覗き込んだ。とろとろとしたご飯と細かく刻まれたニラとふんわりと花のようになった卵が入っている。
「もしかして…ニラ嫌いだった?」
「ううん、そんなことないよ。ただ…両方入ってるなんて珍しいなぁって」
「や、やっぱり? ニラって風邪に効くらしいけど、嫌いだったらどうしようかと…」
 苦笑いするロイと一緒にプリンもクスクスと笑った。
 お茶碗に盛り終わると、一口だけスプーンですくい、立て膝の体勢でロイはプリンの前に来た。
「はい、口開けて」
「えっ、だ、大丈夫だよ。一人で食べられるから…」
「いいからいいから」
 プリンは仕方なくロイの言う通り口を開ける。あーんとでも言ってしまいそうな感じに。口元まで持ってこられたスプーンの先はそのままパクッと口の中に入れられる。
「どう?」
「…おいしい♪」
「良かった〜…」
 ロイはプリンの笑顔を見てほっと胸をなでおろした。


 その後、ロイは夕飯になるまでプリンと一緒にいたらしい。
 おかげでプリンはトーナメント中止のことであまり落ち込まずに済んだ。
 翌日、プリンの風邪がうつってロイが熱を出したことはいうまでもない。






 
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あとがき
ただ少しラブラブしているだけの作品になりました(何
おかゆといったら土鍋でしょう(謎
えりあるさんから貰ったキリリクイラストを見て衝動書き(笑
貰ったイラストは普通のご飯なんですけれど、
やっぱり風邪といったら食べるのはおじやかおかゆでしょう(何
でも、ネスが住んでる街っておかゆあるのかな?(待
アイテムにあるんだからあるか(何
えりあるさんにささげます☆


2004/11/21修正