何か感じる同じもの
なんとなく視線を感じたのでロイは振り向いた。
アイクがいつもと変わらない表情で自分のことを見ていた。
彼はマルスと同じく、自分と同じ系列の世界の人だとか。だから観察している、というのとは違ってる気がする。
「……何かついてますか?」
「いや」
アイクは決して悪い人ではない。少々単純な性格に見えると言うと本人に失礼だが、あまり難しいことは考えなさそうである。だからなのか、“この世界”に来てカービィやポケモン達を見てもそこまで驚かなかったし、彼らを避けることはせず、自分から積極的に交流をする人だ。だがいまいち表情がないというのか、冷静すぎる部分がある。
そういう人に黙ったまま見られる。それがロイの戸惑いの原因だ。
ロイも一つの軍の将を務めていたから様々な性格、個性を持った人々を接してきた。しかし彼のような人と接するの始めてだった。
「ぼく、何か気にさわるようなことでもしましたか?」
「いや、そうじゃないんだが」
何やらアイクの方もどういう態度を取ったらいいのか分からないようだった。「あー…」と言葉を詰まらせながら頭を掻いている。
「なんて言ったらいいのか、本当よく分からないんだが…少し似てるな、と思って」
「似てる? 誰にですか?」
「うちの軍師っていうか参謀に。でもなんで似てるって思うのかこれがよく分からない」
「どういうことですか?」
「性格や態度は全然違う。容姿だって共通点がない。でも、なんか似てるな、って感じる」
確かにそれはよく分からないことだ。性格も容姿も似ていないというのに似てるなんて感じるなんておかしい。
思わず二人は互いに頭を捻った。
「第六感のようなものとか?」
「俺は魔法の知識や技術なんか分からんし、リュカやネスみたいな能力もないぞ」
「でも、アイクだから感じる何か、だと思いますよ」
「……考えてても埒があかん」
本当、細かいことはあまり考えたがらない人である。
だが、アイクがとっつきにくい人でないことだけはロイも分かった。いつの間にか先ほどの戸惑いも消えていた。
「まあ、なんだ。今更言うのもなんだが、よろしく頼む。あと、敬語はやめて欲しい。俺、貴族との接し方とか教養っていうの分かってないからさ」
「ああ、分かったよ、アイク」
返事をした時、ロイは初めてアイクが少し笑っていたように見えた。
あとがき
蒼炎+暁のキャラ、セネリオの設定を知っててエリニニ前提のロイだったら思いつきそうなネタ。
2008/03/18執筆
2008/12/30修正
幸 ゆきな
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