もはや彼専用になった格納庫の一つに彼の“弟”がいる。
彼は“弟”の所によくいる。自分の部屋で機械を弄っていたり他の部屋に行たりすることもあるが。
「……でもってさ、アイツ、ずっとシークといたんだぜ?」
“弟”と呼ぶが人間ではない。彼より何倍もの大きさはある人型重機械兵器。
だが彼のしている行動は他人から見れば機械に話しかけているようにしか見えない。現に彼以外にその“弟”を人間のように扱っている人を見たことがない。彼曰く、そうなるのもおかしくはないとのこと。
「仕事だからってなんだよ、ったく……こっちが話しかけてやってるのに」
彼も特殊だが、“弟”の方も特殊なのは薄々気付いていた。
どうやらヒューマノイド――中央管理コンピューターにいる赤髪の子みたいな……ああ、あの子はどっちかというとサイボーグか――よりも人間に近い意識・思考があるらしい。
一回、どういう仕組みになっているのか解体してみたことあるかと訊いて、酷く怒られせてしまい危く戦闘になるところだった。
「えっ……おい、ジェノ!!」
なんだか怒った様子で彼は“弟”の肩から降りてきた。この様子だと“弟”に言われてやっと気付いたのだろう。
「覗いてるんじゃねぇ!!」
「覗いてはいないさ。聞いていただけだ」
ウーと獣が唸るような表情でこちらを睨んでいる。盗み聞きされていたことに腹を立てているのか、揚げ足を取られたと思っているのか。いずれにせよそのムキになるところがが可愛らしく見えてしまう。
「あ、笑ってんじゃねぇよ!!」
「ごめんごめん。でも、俺ばかり気にしてたら“弟”君が妬くんじゃないかな」
「!!」
まるで意表を突かれたかのような驚きよう。“弟”の方を見るとこっちを見て、さっきよりかは弱々しく睨んできた。
「『お前もオレに妬かせるようなことするくせに』?」
「ち、違う!! そんなこと思ってないっ!!」
そう否定するってことは、図星のようだ。素直なんだか、素直じゃないんだか。
クスクスをその様子に思わず笑いが零れてしまう。すると馬鹿にされてると勘違いしたのか、帽子を深く被って背を向けられてしまった。いじめすぎたかな。
「ごめんごめん。さっきのことはちゃんと話すから、拗ねないで」
後ろから抱きしめる。いつもなら抵抗されるのに、今は抵抗されなかった。
「拗ねてなんか……ねぇよ」
気付けば腕を掴まれていた。幼い子供が甘えるように。
本当、素直じゃない。
「あれは君のこと話していたんだよ」
「オレのこと?」
珍しく“弟”の肩に座らせてもらえた。“弟”の方は許してくれているらしいが、いつも乗せてくれないのは“弟”に馴れ馴れしく接されるのが彼としては嫌だからとか。
「正確には君と“弟君”かな。やっぱり似てるって言ったんだ」
「ジェノが?」
意外だったのか、じーっと顔を見つめてきた。頭でも打ったかとか聞かれそうだ。
「デリックは“弟君”が研究員になんて呼ばれているか知ってるかい?」
きっと知らなくはないだろうが、念のため聞いておく。彼はその単語が嫌いなようだから、知らないと背を向けられて言われそうだが。
「……知らない」
予想通りの態度。訊かれたくもないこと訊かれたという具合だ。
勿論、何故彼がそういう態度をするのかは知っている。
「アシュラって呼ばれてるんだよ」
彼は無言で眉間にしわを寄せた。ついでに横目でこちらを見て、知ってるくせにとでも言いたげそうだ。
アシュラという単語を彼は酷く嫌う。理由は彼の口からは聞いたことはない。
知っていて言う自分はすごく意地悪だなと思う。あえて知らないフリをするのは彼の口から聞きたいからなのだが、彼は相当滅入っていない限りは自分自身の過去のことを洩らさない。それは自分にも言えることなのだが。
「アシュラって大昔信じられてた神様で、腕が人間より多くあるんだってさ」
「コイツが腕四本なのはともかく、俺は二本しかない。だからアシュラなんかじゃねぇよ」
「闘争的な性格なんだってさ」
そういうと彼は黙り込んでしまった。また背を向けられた。
「それにね、確かにデリックの腕は二本しかないけれども……俺のこと掴んで離そうとしない腕を沢山持ってる。
そう言った点じゃ、君はアシュラだよ」
何か言おうと思ったのか、すぐに振り返ってきた。でも、言う暇を与えないよう即座に抱きしめた。
「誰にも渡したくないんだろ?」
「……突き落とすぞ」
「『オレはギガデリックだから』?」
「分かってんなら言うなっ」
まるで駄々っ子のようにぎゅっと背に手を回してきた。まるで沢山の腕で捕まれているような気分。
思わず可笑しくなって、クスクス笑いながら頭を撫でてやった。
「君のお兄さんは独占欲が強いと思わない?」
「おい、変なこと弟に吹き込むんじゃねぇ!!」
「えー」
またキツく睨むと彼は腕にがっちりと自分の腕を絡めてきた。
しばらくは彼の機嫌をなおすので時間がかかりそうだ。
ジェノギガはこんな感じ
ギガから求めてくる時も多いけど(何
ギガは絶対ツンデレだと思う
執筆中BGM : ALI PROJECT 【阿修羅姫】
この曲はジェノギガでギガ視点ソングだと思う(待
2006/05/14 幸ゆきな