ムビキャラ小ネタSS1
01 ホリエレ 【神の定義】
02 エグゼ、鎖(+村雨) 【勉強するであります】
03 グラアミ 【空色は何色?】
04 鎖村 【背丈】
05 鎖村(+プードル) 【いぬ】
06 ジェノギガ 【暇つぶし】
07 エレグラアミ【bless you】
08 エレグラアミ【何も感じないの?】
09 エレグラアミ【ただ祝う日】

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⇒ホリエレ 【神の定義】

「神は存在するんだろうか」
『らしくない質問だな。何かあったのか?』
「今日、またグラビティが来たんだ」
『グラビティ……あの重力少年か』
「うん。で、彼が見た夢の話を聞いたんだ」
『それに神が出てきたと?』
「神かどうかは分からない。本人もよく分かっていないようだったし。
 でも聞いた風貌がデータの中にある神話というのに似ている部分があった」
『それで神が存在するか気になったのか。面白い理由だな』
「……で、存在はするのか?」
『エレクトロ、お前自身はどう思う? 神は存在するのか否か』
「……分からない。
 神話や聖書でいう神は世界を創ったと言うけれど、科学的に考えれば世界は人為的に創られたわけではなく――
『そういうではない。言っただろう、“お前自身”はどう思う、と』
「……分からない」
『では質問を変えよう。
 もしお前が神がいると信じるならば、どういうものを神と呼ぶ?』
「……全てを創り、それを見守るものがそうなんじゃないかと思う」
『そうか。ならば、お前の全てを創った私はお前にとって神か?』
「……違う。ホリック、何が言いたいのか解らない」
『神とはその者の中にある定義によって異なる。
 見守る者を神だ、人を支配する者は神だ、などという。
 大昔には姿なき神を崇める者もいれば、像のある神を崇める者もいた。神話に出てくるような風貌の者を持つような者が神がいれば、我々と大差変わりない姿の神もいるやもしれん。
 ある者は神と言う存在を、悪魔だという別の者もいる。
 そしてお前は創造主を神だと思うと言ったが、お前の創造主である私は神でないと言った。
 実に興味深い矛盾だと思わないか』
「ホリックは、神は存在しないと?」
『科学的根拠を求めるならば、存在しない。それは単なる妄想だと定義できる。
 しかし我々が《神の創造物》だと定義するなら、存在するかもしれん。
 また定義が違えば――己が神であるとも言える』
「……ホリック、やっぱり俺には解らない」
『定義が違えば、誰でも神になれるということだ。
 仮想の世界ではなおさら――いや、まだそれは早かったな』
「……ホリック?」
『お前が《神》の存在を考えるには、まだまだ知識不足ということだ。
 そもそも神の存在を考えるなど、我々の分野ではなく哲学的分野だがな』
「……知識があれば解るのか?」
『それはお前次第だ、エレクトロ』

⇒エグゼ、鎖(+村雨) 【勉強するであります】

『鎖殿、お尋ねしたいことがあります』
「ん、なんだ?」
『村雨殿は前リーダーのご子息だと聞いたであります』
「アイツはそう言われるの嫌いだけどな」
『それで疑問に思ったのですが、何故に村雨殿はそれがお嫌いなんでしょうか?
 場合によっては現リーダーよりもリーダーに適任だと思うのでありますが』
「自分はそんな器じゃないから、だってさ」
『器――
 1)物を入れる器具。入れ物。容器。
 2)(ある仕事・地位にふさわしい)才能と人格。器量。人物の大きさ。
 この場合はどの意味でありますか?』
「どう考えたって2だろ。お前、変なところ頭まわらないよな」
『申し訳ない…以後、努力してみるであります。
 しかし、器じゃないからお嫌いなのは疑問に思うのであります』
「なんで疑問に思うんだ?」
『子は親の偉業に憧れるもの、と自分のデータにはあります』
「普通はそうだけどな……時と場合によってはそれが重荷になるんだ」
『重荷に、でありますか』
「親が凄すぎて、その期待とかに答えられなかったらとかだな。アイツの場合は違うだろうけどけどな」
『何が原因で重荷になってるのでありますか?』
「それは……あんまり他人に言えるようなことじゃねぇよ。
 お前、なんでも疑問に思ったこと訊き過ぎ。たまには訊かない方がいい時もあるんだよ」
『そうでありましたか……以後、考慮しておくであります』
「後よ……その口調、どうにかならないのか?」
『無理であります』

⇒グラアミ 【空色は何色?】

 久々にいい天気だった。空にあの鈍色の雲がないから。
 だからグラビティはアーミィを無理矢理連れ出し、お気に入りの廃ビルの屋上にきていた。
 特に何かするつもりもなく寝そべって空を見る。
 アーミィも突然連れ出され、暇をつぶすものも持っていないので一緒に寝そべった。
 空を見ているうちにグラビティは研究所を出る前アーミィが言っていたことを思い出した。
「昔の空は時間によって色が変わるらしい」
 その後一体どうやって変わるんだろう、誰かが変えてるのかなどと質問された。
 勿論、グラビティも知らない。
 でも初めて研究所を出て本物の空を見た時、なぜか違和感を感じた。
「……やっぱり色が違うんだよなぁ」
「またその話か……」
 思わずアーミィは溜め息をついた。
「確かにドーム内で再現されてた空は青かったけど、それも違うって言ったよな、お前」
「あんなの空の色じゃねぇ」
「なんで分かるんだよ」
「わかんねぇ」
 分からないのはこっちだとアーミィは思わず毒づきたくなった。
 時折グラビティは自分達が知らないことを知っている。本人もどこで知ったのか分からないと言う。
 どちらかというと現実的思考のアーミィとしてはありえないと考えてはいるのだが、
「でも……確かに見てみたいな。本物の青い空」
「だろう?」
 グラビティなら信じられるとこっそり思っている。口に出す気は全くないが。
「なぁ、グラ――」
「……ZZZ」
「……相変わらず、寝るの早いな…」
 だが確かに寝るには最適な天気だった。

⇒鎖村 【背丈】

 男だろうとやはり長身というものは憧れ。
 鎖はその長身に部類する。
 加えて彼はいつもブーツを履くため、更に高く見える。
 髪型も逆立ってるのでまた更に高く見える。
 なので人ごみの中にいてもすぐに見つけられる。それはまあいい。
 しかし並んで歩かれると、
「村雨ってこんなに小さかったっけ?」
 なんてよく言われる。それが彼の悩みだ。
「別に村雨は小さいわけじゃねぇよ、なぁ?」
 そう、決して村雨がそこまで小さいわけじゃない。
 ただ完全装備の鎖がデカすぎるだけ。
「確か村雨の身長って百六十き――」
「百七十」
 割り込むように言う村雨。表情は明らかにふてくされている。
「……確か百ろ」
「百七十っつたら百七十なんだよ」
 明らかに怒った声で言う村雨に、鎖は思わず苦笑いを浮かべた。
「そうだな。百七十だったな」

⇒鎖村(+プードル) 【いぬ】

 村雨がじーっと見つめる先。
 それは鎖のコートのフード――の中にいるピンク色のもこもこした物体。
「……よくそんなもん入れてられるな」
 どこからきたのかは知らないが、やたらと人懐っこいそれがあまり好きでない村雨。
 いつもは鎖と並んで歩いてるのだが、今日はそいつのせいで一メートル後ろを歩いてる。
「別に害はないんだからいいだろ?」
 どうやら鎖もそいつを気に入ったようで、ずっと一緒にいる。
 村雨としては鎖を取られたような気がして、嫌でたまらない。
「こんなに可愛いのになぁ」
「そんなもこもこで毛むくじゃらのどこがいいんだかっ」
 また、たかがそれに対してここまで嫉妬している自分も嫌でならない。
「そういう村雨も犬っぽいよな」
「はぁ!?」
 予想もしなかった一言に思わず声をあげた。
「嫌なら家にいればいいのに付いてきたし」
 鎖は何を思ったのか突然村雨の方に振り替える。
「そういうところが犬っぽいぜ。可愛くて」
「!!?」
 ボンッと効果音が聞こえそうなぐらい村雨の顔が一気に真っ赤になった。
 鎖はそれをニヤニヤと見つめてきたので、思わず顔に拳を飛ばした。
 フードの中のもこもこは能天気に鳴いていた。

⇒ジェノギガ 【暇つぶし】

 「ジェノってさ」
 ソファを独占して寝転がっていたギガデリックは、天井に視点をむけたままジェノサイドに問いかけた。
「なんでここなんかに入ったんだ?」
 ジェノサイドの方はというと、いつもの服ではなく黒いタートルネックに黒いズボンと黒尽くめの姿で、仕事をしているのかデスクに向かったままだ。
「……聞いてんのか?」
「聞いてる聞いてる」
「じゃあ答えろよ」
 互いに互いの姿は見えていないがどうしてるのかは大体わかるよう。
「そうだな……行く場所がなかったからかな」
 ジェノはキィと背もたれにもたれかかる。
「こっちに来た時、まぁ不安定だったからか色んなところで大暴れしててね」
「で、とっ捕まったわけか」
「いや。落ち着いてる時に交渉をもちかけられてね。悪くなかったから入ったってわけ」
「へぇ……」
 ゴロンと寝返りをうつようにギガデリックはジェノサイドの方を見た。
 ジェノサイドは変わらずデスクに向かったまま。
「知識とかはここに入ってから全部覚えた」
「……それ聞いたら研究員の奴ら、泣くんじゃね?」
「どうだろうな。ヴォルトは驚いてたけど」
 クスクスとジェノサイドは笑った。
 それを見て何を思ったのか、ギガデリックは後ろから抱きついた。
「どうした?」
「……暇」
「そうだな……休憩にしようか」

⇒エレグラアミ【bless you】

 夕方に差し掛かった頃、急に雲行きが怪しくなってきた。
 アーミィは特に変わりないが、エレクトロは少し慌てていた。例え生身の部分の方が多いとはいえ機械の体には大量の水を被るという行為は危険だからだ。グラビティはというと、瓦礫が積み重なってできた高台の上に立ち、空を見上げていた。
「すぐに雨が降るな」
 まるで小動物のように鼻をヒクヒクさせてグラビティが言うと、それは困る!とエレクトロの悲鳴が後から続いた。
 そうこうしてるうちに雲は段々と色を濃くしていき、それに比例してエレクトロの焦りは増していく。
「なぁ、エレクトロ」
 不意にアーミィがエレクトロの腕を引っ張り、自分が見つめていた方を指差した。


「うわぁ……間一髪」
 建物に駆け込んですぐ、空はまるで壊れたシャワーのように大量の雨を降り注ぎだした。
 アーミィが指差した先にあったのは教会だった。とはいえこんなご時世に様式のある宗教なんてものはない。おそらくは遠い昔に建てられたものだろう。廃墟となってはいるものも、幸い屋根はあまり破損しておらず雨を防いでくれている。加えて無人というのは彼らにとって好都合だ。
「これじゃあしばらく動けないね」
 と二人に言ったつもりだったのだが、そこに二人はいなかった。
 二人とも教会の中を見て回っていた。アーミィはこの場所に危険がないか。グラビティは何か面白いものはないか。
 けれども二人とも初めて見た場所に興奮を押さえきれない子供のように見える。グラビティはその通りかもしれないが。
「ここはどんな場所なんだ?」
「多分、教会だよ。神様にお祈りを捧げていたところ。俺も実物を見るのは初めてだ」
 アーミィとエレクトロは離れた場所にいたが、声は教会内によく響いて聞こえた。そういえば教会ではミサという神に捧げる歌を謡うと教えてもらったのをエレクトロは思い出した。
「特に危険はないようだな」
「そうだね。あれ、グラビティは?」
 いつもなら初めて見る場所にくるとグラビティはバタンバタン暴れて―酷い時はその場所を半壊させて―いるのに、今日はその音が聞こえない。
 何かあったのだろうかと慎重に奥へと進む。すると、珍しいことにグラビティがおとなしく何かを見上げていた。
「うわぁ……!」
 それは埃などの汚れを被って霞んではいるものも、様々な色を放っていた。
 初めて色彩豊かなものを見た三人はしばし無言でそれを見つめていた。
「……なぁ、これなんだ?」
 最初に沈黙を破ったのはグラビティだった。
 彼がここまでおとなしいのはとても珍しいことだったりする。こういう時は彼がその見ているものに大変興味を示している証だ。
「ステンドグラスだよ。色んな色のガラスを使って一枚の絵になってるんだ。
 ここまで色んな色が使われてるなんて、すごいな……」
 大分時間が経ってるのに破損してないのもすごい、とも付け足してエレクトロは言った。
「何が描いてあるんだ?」
「教会だし、神様とか天使とかじゃないかな」
「……そんなものいるわけないのに、なんで昔の奴はこんな場所やこれを作ったんだろう?」
 アーミィが怪訝な表情を浮かべた。彼らしい意見である。
「それは昔の人の感覚じゃないと分かんないんじゃないかなぁ。でも、少なくとも……」
 目を閉じて思い出されたのは、エレクトロに色々考えるきっかけを与えたある人の姿とその人が言った言葉。
「救いを求めてたんじゃないかな……」
「……救いか」
 三人はまた、しばらくステンドグラスを見つめていた。


「なんであんなの見つめてたんだ?」
 雨で冷えた空気をしのぐために身を寄せあっていると、珍しくアーミィがグラビティに訊ねた。
「なんとなく」
「グラビティはいつも“なんとなく”だよね。不思議だよ」
 足しにはなると思って落ちていたぼろい布切れを毛布代わりにかけた。身を寄せあっているからか、教会はとても広く見え三人はちっぽけに見えた。けれどもとても暖かかった。
「お前こそ何不思議なポーズしてんだよ」
「これ?」
 気が付くとエレクトロは胸の前で両手を合わせていた。
「祈りのつもり」
 にこっと笑って言うと、グラビティは真似をして両手を合わせた。アーミィも一つ溜め息をつくと同じように真似した。
「神様、今日生きられたことに感謝します。明日もまた生きられますように。それと」
 明日には雨が止んでますように。

⇒エレグラアミ【何も感じないの?】

「二人がやってる任務って……その……どうなの?」
 エレクトロのその一言にアーミィはかなり驚いていた様子でエレクトロを凝視した。まさかエレクトロがそんなこと聞いてくるとは思わなかったからだ。
「どうって……任務の内容とかはデータとしてここに蓄積されるだろ」
「その、データとかでじゃなくて……アーミィ達はどう思ってるのかなって……」
 やっぱり聞きづらいのか、手をわしゃわしゃと弄っていたり目が泳いでいたりしていた。
「別に、どうって言われてもなぁ?」
 宙に浮いて寝そべっていたグラビティがアーミィに抱きついて同意を求めた。アーミィは嫌そうな顔をしたが、振りほどけないのを知ってるからか抵抗はしなかった。
「……任務だからな。別にどうも思ってない」
「……嫌だ、とか思わないの……?」
 ちらちらと顔色を伺うかのようにエレクトロは二人を見た。
 その様子を見て二人はお互いの顔を見合わせたあとエレクトロを見た。
「別にどうも思ってないって言ってるだろ」
「何が嫌なんだよ?」
「……ごめん。別にいいんだ。そうなら」
 二人の反応を見て落ち込むようにエレクトロは俯いた。
 どうしてだか分からない二人はまた顔を見合わせた。

――二人は……人殺しをしてるのをどうも思ってないんだね……

⇒エレグラアミ【ただ祝う日】

 ねぐらに帰ってきてみれば、今日はなんだかごちそうだった。と言っても、いつも買っている缶詰が一つ増えて、ついでに形の悪いリンゴが三人分あるだけだが。
「なんだよ、これ」
 グラビティが指さしたのはごちそうではなく、テーブル(代わりにしている壊れた機械)の中央に飾られてる蝋燭。
 別に蝋燭自身を見たことがないというわけではない。この蝋燭の色が赤かったから疑問に思ったのだろう。
「……今日はくりすますって言うらしい」
「くりすますぅ?」
 アーミィの言葉にグラビティは首を傾げる。アーミィも口ぶりからしてその単語の意味をあまり理解していない様子だった。
「昔あった宗教のお祝いの日だよ」
 エレクトロが何やら星の形をしたきらきらしたものを手に抱えて出てきた。
 察するにエレクトロが言いだし、アーミィが買い物を手伝ったのだろう。
「しゅーきょーとか、俺ら関係ねぇじゃん」
「うん。でもね、宗教が違ってもクリスマスだからっていう理由でみんなお祝いするんだ。コロニーの人もなんだか盛り上がってたし」
 それで食物が少し安くなってたしね、と付け加えてエレクトロは言った。
 アーミィは特に興味はなさそうだったが、グラビティは「いつもより多く食い物が食えるなら」と少しばかりはしゃいでいた。
「それに、たまにはこういうことして楽しむのもありじゃないかなと思って」
 エレクトロは抱えていた星の飾りを二人に手渡した。特に何か仕掛けがあるわけではなかったが、光の反射具合できらきらと輝くそれは綺麗だった。
「なぁ、祝いって、何を祝ったんだ?」
 グラビティは重力を操る力で星を宙で回転させて遊び始めた。その様子に思わずエレクトロに笑みが零れた。
「その宗教を作った人の誕生日なんだって」
「本当、昔のやつはカミサマとか好きだな」
「理解しがたい」
「あはは。実際お祭りなんて見えないものを祝うことが殆どだよ」
「エレクはこういうの好きだよな」
 そう言われてエレクトロはきょとんとした。そんなに沢山言ってるとは思ってなかったからだ。
「確かに神様と呼ばれる存在の定義とか、なんで人はそういうものを作りだしたのかは気になる。だからと言って――」
「エレクトロの哲学的な考えは時々理解しがたい」
「アーミィは理解しがたいばっかりだ」
 にししと笑うグラビティをアーミィは睨んだ。特に反論はしなかったが、拗ねたのかそのままそっぽを向いてしまった。
「まあまあ。俺はただ単に二人とお祝いしたいだけ。一人じゃお祝いなんてできないし、ご飯も美味しく食べれないよ」
「そうだ!メシ、メシ!早く食おうぜ!」
「……」
 呆れたとでも言いたげな溜め息を一つつくと、アーミィはこちらに向き直った。
 それを見てエレクトロはまた笑みを零した。そんなに嬉しいのかとまたアーミィに疑問を持たれそうだ。
「そうそう。クリスマスにはお祝いの言葉があるんだよ」
 蝋燭に火を灯し、取って付けたように垂れている電球の明かりを消した。
 小さいながらも赤く力強く燃える蝋燭の火を通して三人は互いを見あった。

 メリークリスマス